市川準監督特集2016トークショーメイン

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大人という文鎮クレージーキャッツ

市川準監督特集2016トークショー

尾形ラッパ屋は大学卒業して就職して、同世代の仲間たちがずーっと一緒に仲良く歳をとって。役者さんの成長に合わせて主人公たちもどんどん歳とってくっていう感じになってるでしょ。

鈴木まあそうですね。

尾形『会社物語』は、今なら撮れんるじゃないですか(笑)。

鈴木今やりますか。

犬童これ、やったほうがいいんじゃないですか。

鈴木演奏はちゃんとできないといけない。『上海バンスキング』みたいな感じかな。

尾形今、鈴木聡が『会社物語』をどう直視するだろうっていう。

犬童家庭内暴力はあるのかみたいな。

鈴木現代で息子との問題があるにしても暴力にいかないでしょ、きっと。

犬童まあ、時代を読むとしたらね。

鈴木逆に暴力にいっても、息子がお父さんの膝に顔をうずめたりはしないですよね。映画はまだコミュニケーションできてるってことですから、むしろロマンチックに見えますよ。

犬童今ならそれをどう描くのかっていう。

鈴木あんなふうにわかりやすくは顕在化しないんだろうとは思いますよね。

犬童28歳のときに最初に考えた『会社物語』を徹底的にウェルメイドにやるっていうのもあるんじゃないですか。それはそれでロマンチック。

鈴木あるかもしんないけど、時代はどう設定すればいいんですか。現代にした方がいいのか、あの頃のままがいいのか。

犬童それ難しい。僕ね、今日観て思ったのは、クレージーキャッツのメンバーは分厚い大人というか、ものすごいシズル感のある大人に見えるんですよ。あの説得力を出すのは難しいですよね。

鈴木なんであんなに大人なんだろう。

犬童クレージーは映画の中でジャズという好きなことの話してるじゃないですか。それを話せる分厚い大人の重さになってるんですよね。大人という文鎮を置いて映画が飛ばないように止めていくみたいな感じっていうんですかね。クレージーキャッツにはそういう力があるんですよ。

鈴木あとは、身体とかね。

犬童後ろ姿とか、全身が大きい。シルエットがすごいですからね、圧倒的にね。

尾形ここで質問を受け付けます。どなたかいらっしゃいますか。

質問1脚本で、せっかく書いたんだからこれはやってほしかったなと思うシーンやセリフはありますか。

鈴木どうだったかなあ。すぐには思い出せないけど、当時はいろいろ思ったと思います。僕は、おとぎ話みたいにしたかったところはあるんですよね。

犬童これだとちょっと語り口がリアルすぎるというか。

鈴木全体的なトーンとして、社会性みたいなものを入れることが生々しく感じたところはあるんですよね。おそらく僕が最初にイメージしたものって、『アパートの鍵貸します』とかウディ・アレンみたいな大人の童話のようなもの。外国の映画が大好きで、日本の映画にはお洒落なものが足りないと思っていたんですよ。ちょっと外国映画コンプレックスみたいになってたかな。だけど今この映画を観て思うのは、家庭内暴力も含めてそのときの日本とか昭和を捉えられてるから、こっちのほうがユニークなんだろうなと思いますね。

質問2木野花さんがすごい綺麗だなあと思って観ていました。また、西山由美さんがかなり重要な役で出てますが、この方が決まった経緯を教えてください。

尾形どういう経緯で決まったかはわからないんですが、製作の坂本事務所に所属してるのが西山由美さんなんですよ。その後、阪本順治監督の『トカレフ』でいい役をやられて。

犬童西山さんのことを映画の中で追いすぎているっていうのはないですかねえ。ジャズバンドの物語が中心になりはじめたんだからそっちに話を戻さなくてもいいだろうみたいな。クレージーキャッツに吸引力があるからそのまま進行して欲しくなるっていうのがどうしても。

尾形市川さんて基本的にサービス精神がある人で、自分のやってるコマーシャルとかスポンサーにすごく気を使ったりするんです。そういう意味で、西山由美さんに対しても少し増やしたのかなあというのが僕の想像ですけどもね。

鈴木木野花さんもいいですよね。ちょっと色っぽいですよね。

犬童よかったですよね。いい役ですよね。

鈴木いい役ですよ! 木野花さんの、あの目線があるからちょっと救われるっていうところありますよね。ああいう人がいるということが世界を救っているみたいな感じすらしますよね(笑)。

尾形あのとき「木野花さんて美人だ」と市川さん本人も言ってました。すごく印象に残る役。

鈴木ついこの間、僕の芝居を木野花さんに演出してもらったんですよ。美人だって言えば良かった(笑)。

質問3『会社物語』の好きなところだけつまんで観るとおっしゃいましたけど、たとえばどういう場面でしょうか。

鈴木冒頭の、夜明けのオフィス街ですね。丸の内のビルのショットをすごく積み重ねていて、音楽もとても良いと思うんですね。市川さん、よく撮ってくれたなと思う。もうすっかり変わっちゃった。僕と尾形さんがいた博報堂は東京ビルっていうところにあったんですよね。

尾形『会社物語』の建物のイメージが東京ビルという古い建物だったんです。

鈴木いわゆる昭和の会社という風情があるあたり。それをものすごく素敵に撮っといてくれて、嬉しい気持ちになるんですね。

尾形ちなみに、市川さんの大好きな小津安二郎監督の、『麦秋』で佐野周二かなんかが勤めてるのがあのビルの感じで。丸ビルとか中央郵便局の見えるとこですね。

鈴木それとジャズコンサートに至る流れでクレージーキャッツのドキュメントな表情がたくさん見える部分というのは、映画のストーリーと切り離してもいい気持ちにさせてくれるというか、うっとりさせてくれるものだなあと思って。クレージーキャッツに関しては、完全にオーラ出っぱなしですよね。

犬童すごいですよ。出っぱなし。メンバーが全員まだいるときにちゃんと描いてるというか。表情とかシルエットとか、ほんとに一人ひとりをちゃんと撮ってると思いましたね。

尾形石橋エータローまで出てる。

鈴木歴史的な作品ですね。

尾形植木等さんが「オレたちが今の日本を作ったんだぞ!」って。

鈴木あれはやっぱりグッとくるというか、ホントのことだもんね(笑)。植木等さんは最もあれを言うのにふさわしい人であるよね、間違いなく。

尾形「サラリーマンは、気楽な稼業ときたもんだ」って歌った人でもある。

鈴木まさに高度経済成長時代のシンボルですよね。ニッポンの何か明るい時代を作った人だもんなあ。

犬童『ニッポン無責任時代』と二本立てでやってほしいですよ(笑)。でも、『会社物語』の主役は植木等にはできなくて、やっぱりハナ肇なんですよね。あの顔で定年退職していくことができるというか。

尾形そろそろお時間です。かなり鈴木節炸裂でした、ありがとうございます(笑)。鈴木さん、最後に劇団ラッパ屋のPRをぜひ。

鈴木来年の1月中旬に新宿の紀伊國屋ホールで、劇団ラッパ屋の新作『ユー・アー・ミー?』というコメディを公演します。

犬童僕、意外と観てるんですけどすっごいおもしろいですからね。観始めたらあっという間に観終わるっていう。

尾形鈴木さんは舞台に立ちませんよね。

鈴木僕は出ないで脚本と演出をやります。

犬童たまに出たくなったりしないんですか。

鈴木あのねえ、みんなに止められるんです。

犬童じゃあ出たくはなるんですね(笑)。

鈴木気持ちはね。他からオファーがあれば。監督からオファーがあれば、やります。

犬童わかりました。

尾形ということで今日はどうもありがとうございました。

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構成:佐々木理代
写真:©megurocinema